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[ゆけむり通信Vol.32]
1/2/1999
『シャープス、フラッツ&アクシデンタルズ SHARPS, FLATS & ACCIDENTALS』
カラマーゾフ兄弟の軽業
ホリデイ・シーズンに時折ブロードウェイで上演されるクラウン芸のショウ『フール・ムーン FOOL MOON』は、出演者(2人の内)の 1人、ビル・アーウィン Bill Irwin(映画『ステッピング・アウト STEPPING OUT』、『スカパン SCAPIN』)の知名度もあってか、比較的日本でも知られているようだが、フライング・カラマーゾフ・ブラザーズ The Flying Karamazov Brothers のショウはどうなんだろう。
4人組の楽しく達者なジャグラー集団だ(ホントの兄弟じゃありません)。
僕が彼らを初めて観たのは、 95年の元旦(『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』のオリジナル・ボビー、ハリー・グローナー Harry Groener 最終出演日の翌日!)。ブロードウェイのヘレン・ヘイズ劇場でやっていた『不可能を成す! DO THE IMPOSSIBLE!』というタイトルのショウだった。
その時の観劇記はこうだ(多少編集)。
[結成は1973年で、その世界では有名な存在らしい。
最大の見せ場は 4人入り交じっての驚異的なジャグリングだが、その他にもアイディアがいっぱいの技を次々に繰り出す。
スティックをジャグリングしながら、そのスティックでマリンバを演奏する。同様に、ジャグリングしているボーリングのピン(状のもの)で、背負ったシンセドラムを演奏する。腕や足を中心に体の各所にシンセサイザーのキイを仕込み、ボールをジャグリングしてキイに当て、演奏する。――という音楽系がかなり秀逸。
ジャグリングする物では、刃物がスリリングなのはもちろんだが、“ザ・ギャンブル”というコーナーで客の持ち寄った物の中からジャグリングする物 3つを選ぶのも、おかしいだけでなく緊張する。観た日に選んだのは(ジャグリングしないメンバーが客の反応を見ながら選ぶ)、中にゼリー状の物が入ったゴム風船、突起のたくさん出た木の玩具、むき出しの棒状バター。観客も一緒にカウントする中、見事規定の 10回ジャグリングを一発でクリアした(3回のチャレンジに全て失敗したら、ジャグリングしたメンバーは顔にパイを投げつけられ、観客には入場料が払い戻しされる!)。
その他、手品的芸、扇子を使った踊りや英語俳句等もやるが、この辺はジョーク。それより、 1人ずつでも見事な芸を見せる各メンバーのキャラクターにそれぞれ味があるのが何より楽しく、すっかりファンになってしまった。
それから、彼らと長年組んでやっているという 5人組のバンド、カミカゼ・グラウンド・クルー Kamikaze Ground Crew も面白かった。スネア・ドラムス+チューバのリズム隊に、スライド・トランペット、バリトン・サックス、アルト・サックスという編成で客席からマーチングで登場、ユニークなサウンドを聴かせた。]
そう言えばそうだった、と自分でも改めて思い出したが(笑)、今回のショウ『シャープス、フラッツ&アクシデンタルズ』も、基本的にはほぼ同じプログラム。
違っていたのは、劇場がリンカーン・センターのアリス・タリー・ホールだっただけに最初に弦(女性奏者)を交えた 5重奏のスタイルで幕を開けたことと、カミカゼ・グラウンド・クルーが参加していなかったこと、それにメンバーが 1人入れ替わっていたこと(プログラムや看板の写真は替わっていなかったから、ある程度急な変更だった可能性もある)。あと、刃物のジャグリングや前回のクライマックスだった大きな段ボール箱の投げ合いがなかったのは会場の関係か。背後に壁のように積み上げられていた段ボール箱の壁が崩れる、というのが前回の幕切れだったのだが。そうそう、英語俳句もなかったな。
実は、 1月 2日日曜日の午前 11時という、まあ普通の人たちは出かけないような時間帯だったので、会場はガラガラ。子供連れの家族が近所の公民館に集まったような雰囲気だったのだが、それでも“ザ・ギャンブル”のコーナーには客席から様々な“難物”が寄せられて、ニューヨークでの彼らのパフォーマンスの浸透度を見た気がした。こういうショウは、観客が少ないなら少ないなりに親密な雰囲気が出来て悪くないですね。
名人の名人たるゆえんは、失敗した時のフォローまでもが技になっている。今回強く思ったことでした。
(1/24/1999)
Copyright ©1999 Masahiro‘Misoppa’
Mizuguchi
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