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ミレニアム、ヨーロッパの旅 3部作
第1話 迷惑なショーストッパー
12月 28日出発、 1月 9日帰国という世間の年末年始を無視するスケジュールを組んだため、フライトの 3時間前まで仕事する羽目になり、この前の年の NY旅行と同じく目覚まし時計を無意識のうちに止め、配車を頼んだタクシーの運転手さんのインターホンにたたき起こされるというあわただしい旅立ちになった。しかし、ロンドンについてしまえば、開演時間に遅刻するなんてことはなく、ミュージカルを楽しむことができた。
ロンドンでの 2日目の夜は、ファンでなかったのでそれほど懐かしいとは思わないアバのヒット曲でつづる『ママ・ミィーア! MAMMA MIA!』。今さらなぜアバ? と思う僕には、チケットがソウルドアウトになっているのが驚きだった。アバのレコードなんて 1枚も持っていないのだが、あの時代、ラジオやディスコでよくかかっていたんでしょうね。使われたナンバーの半分以上を知っていた。しかも、今聴くとけっこういいじゃんと思ったりもして。
さて、問題のショーストッパーだが、ブロードウェイは『シカゴ』のビビ・ニューワースの「これぞフォッシー・ダンス!」という、拍手が鳴りやまないショーストップとは大違いの実に迷惑なものだった。
2幕が始まって間もなくのこと。客席の後ろの方から、何やら大きな声が聞こえてきた。英語が不自由な僕は演出の一つかな?と思ったが、どうも違う。舞台に向かってわめき散らしているのだ。出演者はやり過ごして再開しようとしているのだが、わめき声はいっこうにおさまらない。そうこうしているうちに、出演者は舞台袖にいき、幕が降ろされた。
後ろを見ると、よく太った 40歳過ぎくらいの男性が劇場の係員につまみ出されている。まだわめいているのだが、酩酊しているようにも見えない。ひょっとして出演者の中に以前付き合っていた女性がいて、見ているいるうちに精神状態が不安定になったのではと野暮な想像をさせるほど、わめきちらす理由がわからなかった。 99年 12月 29日ソワレで『ママ・ミィーア!』を観られた方で英語のできる方がいたら、迷惑なショーストッパーが何をわめいていたのか教えてほしい。
さて再開された『ママ・ミィーア!』は、不愉快な出来事を吹き飛ばそうと舞台と客席が 1つになって、それまで以上にノリがよくなり、充分に楽しむことができた。
第2話 劇場のドタキャン
今年の年末年始のロンドンはミレニアムということもあってか、 12月 31日と 1月 1、 2日はほとんどの劇場が休みで、そのかわり 12月 30日金曜にエキストラ・マチネを設定している劇場がいくつかあった。
その前日、映画を観ているのでストーリーがわかるという安直な理由で『テス Tess of the D'Urbervilles』を観ようと、サヴォイ劇場へ。チケットは簡単に入手できたのだが、ホテルの電話番号を教えてほしいと今までに経験のないことを訊かれた。クレジットカードを使ったから慎重になったのだろうと気にもとめず、劇場街を散策してホテルに戻ると、フロントから電話が。
わずかな英語力と想像力のすべてを動員して聞いてみると、「先ほど、サヴォイ劇場から電話があり、明日のマチネの公演は中止になった。チケット代はクレジットカードの口座に払い戻すとのこと」。
なに! さっき買ったばっかじゃん。早く言えよ。
それならば『シカゴ』を観ようと、『ママ・ミィーア!』を見に行く前に、アデルフィ劇場に行きチケットを購入した。
『シカゴ』はエキストラ・マチネということもあり、客席は半分ちょっとしか埋まっていなかった。それで『テス』が、ドタキャンになった理由がわかった。チケットの売れ行きが悪かったため、エキストラ・マチネを中止にしたのだろう。
さて『シカゴ』だが、ヴェルマ役がブロードウェイの『フォッシー』に出演していたヴァレリー・ペティフォード Valarie Pettiford だったが、ビビ・ニューワースとは比べものにならず、ダンスも短くされていて、なんだか残念な舞台だった。
第3話 オー・マイゴ!―その 1―
ロンドンでの 5泊の滞在も終わり、 1月 2日朝の便でベルリンへ移動。外国では失敗しないぞと早起きをして、ヒースロー空港のターミナル 1へ。ところがベルリン行きのゲートの案内が出ない。搭乗案内モニターは、 1時間以上“departure”と表示されたまま。出発時間の 20分前になって、ようやく 26番ゲートと表示された。
さあ、行こうと 100歩くらい歩いて、肩にかけているはずのバッグがないことに気がついた。バッグの中には、パスポート、搭乗券、劇場とホテルの予約確認書が入っている。 8年前の『パスポート紛失事件』が頭をよぎる。あわてて元いた場所に走っていくと、バッグは置いたまま。中を確認するが、何も盗られていない。
ホッとしてゲートに向かう途中、頭の記憶装置がクラッシュしていることに気づいた。ゲートって何番、 27番だっけ?……。通路一番奥の 27番ゲートまでに行くが、搭乗手続きをしていない。途中、ゲートの搭乗を受け付けている案内板を見たが、すべて故障していて行き先がどこかわからない。しかも搭乗案内モニターは、通路には 1つもない。
時間はまだ 10分ちょっとある。モニターのある場所まで小走りで戻ろうとすると、途中で通路が Yの字になっていて、元いた場所へ行く方は進入禁止になっている。
そこにいた警備員にチケットを見せ、ベルリン行きのゲートはどこだと訊いても知るはずもなく、進入禁止でない方の通路を指さし、とにかくこっちへ行けと言う。
言われるがまま進むと、そこではセキュリティチェックをしている。頭の中は、もう大パニック。飛行機は何分待ってくれるのだろう。 10分? 20分? イギリスだから日本みたいには待ってくれないよな。
先に進めば道は開けるかもと、前に進む。するとターミナル 2、 3、 4への案内表示が見える。さっきのセキュリティチェックは、トランジットのためのものだった。もうターミナル 1へ戻れないのか。 この日、午後 3時から観る予定の『ノートルダムの鐘 DISNEY'S THE HUNCHBACK OF NOTRE DAME』の緞帳が、目の前で閉じていく……。
ちょっと待て、ターミナル 1からターミナル 1の トランジットだってあるはずだ。ということに気づき、とにかく動こうとエスカレーターを登ると、さっきいた場所が見える。
ゲートの番号を確認し、動く歩道を必死で走り、間一髪セーフ。唾液が一滴もなくなるほど走ったのは、中学のラグビー部の練習以来だ。
―その 2―
何とか無事、初めての地ベルリンに到着。タクシー代をケチって、ターミナルバスでツァー駅へ。ガイドブックの地図だと、この駅から 500メートルくらいでホテルが見つかるはず。
ところが、駅に着いたら、地図でイメージした街と実際の街の感覚がまるで違う。またもや、ここはどこ? 状態に。旅行会社がくれたドイツ語の地図をワンブロックごとに通行人に見せて道を尋ね、何とかホテルに到着。しかし、その距離は 500メートルどころではなく、地図の縮尺、狂ってるんちゃう? しかも、歩道はデコボコで、スーツケースのキャリーがまともに動いてくれず、重い荷物を引きずりながらの悪戦苦闘。
荷をほどくのは夜にして、今度はお金をケチらず、タクシーで『ノートルダムの鐘』の劇場へ。
劇場に着いたときの感動ってなかった。すっごい苦労して、辿り着いたのだから。もし犬ぞりで北極点に行ったとしても、こんなに感動しないだろう。
―その 3―
初めてのドイツ・ミュージカルに感動し、夜はベルリン・コーミッシュオーパーで『ボエーム』。地図を見ると、地下鉄で一駅。ならば地下鉄で行こう。ところがこの劇場の周辺のポツダマー界隈は再開発が進む場所で、地図には建設中と書かれているだけ。
時間はたっぷりある。道を訊きながら、途中で迷いながらも駅へ。反対方向行きの車両は次々と入ってくるが、プラットホームの反対側は待てど暮らせど車両がない。気長に待つが、あまりにもおかしいと思い駅をよく見渡すと、線路の向こうにあるプラットホームに車両が入ってきているではないか。なんだ別のホームなんだ。時間をロスしながらも、目的の駅へ。
ところがその駅、進行方向とその逆に改札口がある。コーミッシュオーパーはどっちと訊いて、地上へ。その後は地図に従って進むが、行けども行けども劇場が見えてこない。いくら縮尺が狂っていたとしても、通り過ぎている。地図はあてにせずに、またもやワンブロックごとに道を尋ね、開演 5分前、やっと劇場へ。
地図には、劇場が大通りに面しているように表示してあったのだが、本当は 1本裏の道。大通りを真っすぐ行っても、着くわけがない。開演前にバーで、ワインかシャンパンを楽しむ優雅な時間を返せ、アホ地図!
しかし、この地図にはとことんだまされる。翌日観ることになっている『レント』の劇場 * Freie Volksbuhne がミュージカル劇場と表示されていて、『レント』やっているのここじゃないんだ。と、現地の地図と情報誌を頼りに場所を調べたら、結局そこで、無駄な時間を費やす目にあわされた。確かにミュージカルを上演している劇場だけどさ。
できの悪い地図は、迷惑なだけでなく、観光客を窮地に追い込む。**「わがまま歩き」というタイトルのガイドブックだったが、「でたらめ歩き」と変えた方がいいんじゃないの。
それにしても、 1日で 3度も迷子になるなんて。オーマイゴッ!
* Freie Volksbuhne は上に 2つの点がつくドイツ文字ですが、文字バケするのでこう表示しました。
** 他の人が同じことにならないよう、出版社の実業之日本社には修正を求める手紙
を書いておきました。
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