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[ゆけむり通信 番外1997]
5/24/1997
『ジェリーズ・ガールズ JERRY'S GIRLS』
素晴らしい大浦みずき、そして…
大浦みずき。一度観たかった。
ダンスがうまいって評判だったから。
ただ、これまでは、翻訳ミュージカルへの出演が多かったので、いまひとつ踏み出せないでいた(はい、偏見があります)。
今回の『ジェリーズ・ガールズ』も翻訳ものだが、ミュージカルと言うよりはレヴュー。余計なことにとらわれずに彼女の芸を楽しめるだろう。
そんな気分で出かけた公演2日目、雨の土曜のマチネー。8分の入り。
これがなかなかに楽しかった。
完成度という点から言えばまだまだで、演出家(トニー・スティーヴンス Tony Stevens)の意図をなぞっているようなところもある。が、全体に洗練された気分があり、なにより、引き込まれる見せ場がいくつかあった。
そして、不勉強な僕にとっては、大浦みずきはもとより、他にもこんなに力のあるミュージカル女優がいるんだ、という、うれしい発見の舞台でもあった。
『ジェリーズ・ガールズ』は、作曲家ジェリー・ハーマン Jerry Hermanの手がけたミュージカル(『ハロー、ドリー! HELLO, DOLLY!』『メイム MAME』『ラ・カージュ・オ・フォール LA CAGE AUX FOLLES』他)の楽曲を集めたレヴュー。元の舞台を知っていればより楽しめるが、そうでなくてもOKな作り。
今回は8人の女優――大浦みずき、戸田恵子、入絵加奈子、花山佳子、石富由美子、八重沢真美、真織由季、シルヴィア・グラブ Sylvia Grab(プログラム記載順)がジェリーズ・ガールズとなった。
さて、大浦みずき。
素晴らしいですねえ。舞台映えのするスケールの大きな、ミュージカル女優と呼ぶにふさわしい人。
幕が開いてしばらく続いた舞台のノリきれない感じを払拭したのが、この人を中心にしたタップ・ナンバーで、その名も「Tap Your Troubles Away」。子供に扮して踊るそのタップの技術よりも、大浦みずきという存在が観客をつかんだ。華やかだけれども親しみを感じる、そんな存在。
その少し後に、「Bosom Buddies」という、表面上は中のいい2人の女優のライバル心をユーモラスに歌うナンバーがあるが、ブロンドのかつらを付けて出てきた大浦は、ちょっとくたびれかけたブロードウェイの女優そのもの。その強力な存在感ゆえに、共に演じた元音楽座の石富由美子がまるで付き人に見える。
そして、第1幕、第2幕、それぞれの終盤での熱唱「If He Walked Into My Life」と「I Am What I Am」。並の役者がやるとただ臭いだけになりそうな場面を見事にキメる堂々たる歌いっぷり。宝塚のトップ・スターだった人ならではの輝きだ。
その宝塚時代からのファンがいちばん喜んだに違いないのが、男装でさっそうと踊る「La Cage Aux Folles」。このナンバーを女優が男装で踊るという逆転のアイディアも面白いが、とにかく“踊りの大浦”の力、垣間見させてもらいました。
と、まあ、一応は大浦みずきを柱に構成されているのだが、宝塚のようなスター主義であるはずもなく、残る7人にもそれぞれ見せ場が用意されている。
中で際立ったのが、大浦みずきの分まで、という感じで踊ってみせた八重沢真美。
第1幕の「Showtune」、第2幕の「That's How Young I Feel」。この2曲で見せた、余裕すら感じさせるダンスのスケールの大きさは、大浦と遜色ない(そう言えば、この2人が一緒に踊るシーンはなかったなあ)。
それからシルヴィア・グラブの歌。
第1幕「Shalom」。そこにスッと立って、思い入れも見せずに歌う。そのケレン味のない歌が観客の心に(って他の客は知らないが、少なくとも僕の場合)浸み入る。第2幕「Time Heals Everything」。心の痛みを歌っても過度に嘆いたりしない。タイトルのようにどこか自分を癒やすような歌いぶりが、静かな感動を呼ぶ。
この人の歌はちょっとすごい。
戸田恵子という人は声も通るし、コケティッシュな魅力があって、どんな舞台に出ていても思わず目が行く。ここでも、司祭役でコーラスを従えて歌うユーモラスな「Have a Nice Day」などいい感じなのだが、何かこの人、一線を越えない印象がするんだなあ。好きなんですが。
もっとも、このナンバー、コーラスがゴスペルのニュアンスを出せていないという欠点もあるのだが。
さて、数あるハーマン・ナンバーの中で僕がいちばん好きなのは、最も有名な「Hello, Dolly!」、ではなく(第1幕最後でのこのナンバーの扱いは面白く、ハイライトの1つ)、同ミュージカル中の「Before the Parade Passes By」だが、これを入絵加奈子が歌い踊った。
じわじわと盛り上がるこのナンバー、歌だけでも難易度が高いと思うのだが、入絵は、歌いながら、クラシック・バレエ的な踊りもしっかりと見せ、たった1人で1曲支えきる。目頭が熱くなりました。
実は今回、この場面がいちばん驚きだったのだが(観たこともない入絵加奈子に固定観念を持っていたわけです)、あまり驚いたせいで、本当に入絵加奈子だったかどうか自信がなくなった。いや、背の低さからして間違いないと思うのだが、なにしろ3階から観てたからなあ(帰り際に念のためスタッフにたずねたのだが、わかる人がいなかったため、僕の中で謎は深まった)。
この件、みなさんのご指摘を待ちます。
他の人たちには触れないが、先にも書いたように、全体として洗練を感じさせる楽しいレヴュー、観て損はない。
東京・アートスフィア、6月1日まで、大阪・ドラマシティ、6月11〜17日。
どうかお運びを。
* * * * * * * * * *
ところで、劇場に置いてある「アートスフィア」という季刊の無料情報誌を読んでいたら、今年2月にやった『フライド・ライス・パラダイス1997』という、ディック・リー Dick Leeのミュージカルの楽曲を集めた『ジェリーズ・ガールズ』的舞台のことが出ていて、その中で『香港ラプソディー』がダイジェスト的に演じられたという。
おまけに、千秋楽に『香港ラプソディー』の演出家・宮本亜門が来て、「もう一度やりたいね」と言ったとか言わないとか。
そんな機運が高まってるのか?
こちらにも書いたが、『香港ラプソディー』の再演、僕は強く望んでいる。
賛同してくださる方はこのコーナーを。
(5/25/1997)
Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi
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