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[ゆけむり通信 番外1997]
6/26/1997
『君となら NOBODY ELSE BUT YOU '97』
こんな脚本がミュージカルにほしい
1995年のヒット作の再演。三谷幸喜脚本、山田和也演出。
実によく出来てます。
世田谷の理髪店“バーバー小磯”の茶の間。
手前は濡れ縁から庭に。
左は台所で、庭に出る勝手口があり、さらに左には表につながる潜り戸。
茶の間奥のふすまを開けると、廊下を挟んで理髪店。左へ行くと(見えないが)玄関と2階への階段。2階には物干し台。
茶の間の右手にはガレージがあり、表通りに抜けられる(通りは見えそうで見えないし、車も見えない)。
庭は左右とも隣家に接していて、右隅にはバスケットボールのゴールがある。
20代も残り少なくなった小磯家の長女あゆみには諸星堅也、通称ケニーという婚約者がいる。
って、ネタばらししちゃっていいんでしょうか。
やっぱ、まずいっスよね、観てない人に対しても作者たちに対しても。
えーと、とにかく、その婚約者ケニーが突然小磯家を訪れることになり、両親も期待しながら待っているのだが、あゆみは大あわて。と言うのも、ケニーには、あゆみが両親に伝えていない重大な秘密があったからだ。
とりあえず妹のふじみには打ち明けて相談するあゆみだが、なんだかんだで両親に話す機会を失っているうちにケニーはやって来てしまう。
秘密を知らない両親はすっかり誤解してしまい、ごまかそうとするあゆみはウソにウソを重ね始め、思い余って途中で真相を告白しようとするのだが、それがまた新たな誤解を呼び、どんどん収拾がつかなくなっていく。
劇場や映画館でまずパンフレットを買ってストーリーを読んでしまう方には物足りないと思いますが、ご勘弁を。
基本的な構造は『ローマで起こった奇妙な出来事 A FUNNY THING HAPPENED ON THE WAY TO THE FORUM』などと同じで、中心人物にある秘密があって、観客にはその中身が明かされる。中心人物は密かにそれを解決しようとするのだが、予期せぬ出来事が次々に起こってあわてふためく。
そこでポイントになるのが、人物の出入り。
この人物とこの人物がこの状況で出会うとまずい、というのが展開上いくつもあって、それが出会いそうで出会わなかったり、出会いそうになるのを中心人物が必死に回避させたり、出会ってしまって話をしても誤解し合って秘密がバレなかったりして、ハラハラさせ、笑いをとる。その辺の捌きが脚本と演出の技の見せ所になるわけだ。
それを、先に書いた舞台上のいくつかの出入り口を巧妙に使って作り上げていく。
実はここに若干の不満があって、左端の潜り戸と2階の物干し台が1回ずつしか使われない。せっかくの装置なんだからめいっぱい使ってほしい、と貧乏性の僕は装置デザイナーでもないのに思ってしまう。少なくとも『レンド・ミー・ア・テナー LEND ME A TENOR』『バッファローの月 MOON OVER BUFFALO』のケン・ラドウィグ Ken Ludwigなら、装置が壊れかねないほどに使い倒して役者を出し入れさせたはずだ。
と、これはまあ、ないものねだり。
誤解が誤解を生むセリフのやりとりは絶妙。すべてが明らかになってから大団円まで(バスケットボールのやりとり)が若干もたれるが、そこまでの脚本はほとんど隙がない。
役者も、今回初参加の小倉久寛が若干タイミングを外す場面があったものの、あゆみの両親役、角野卓造、高林由紀子を中心に見事なアンサンブル。佐藤慶の存在感は言わずもがな、か。
これで主役あゆみを演じる斉藤由貴の反射神経がよければ文句なしなのだが(特に母親にケニーの写真を見せようとして何度も引っ込める場面など)。
そんなこんなで大笑いしながら思ったのは、ミュージカルもこのぐらいしっかりした脚本で作ってくれたらなあ、ということ。
ホーム・コメディ、OKじゃないですか。この脚本を元にミュージカルを作ってもいいわけですよ。三谷さんが許すなら。
製作者のみなさん、その辺に目を向けてみませんか。
(7/6/1997)
Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi
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